
遠方の実家というのは、普段ほとんど意識に上らないのに、何かの拍子でこちらの心をツンと突いてくる存在だ。
それはまるで、「最近どうしてる?」と突然メッセージを送ってくる元カノのようで、どこか気まずくて、でも無視もできない。
東京都内で働く48歳の僕も、ずっとそんな距離感で実家と付き合ってきた。親はまだ元気だし、家も古いけど倒れるほどではない。
「まあそのうち何とかしよう」
そんな薄ぼんやりした先送りの精神だけを胸に、気づけば10年以上が経っていた。
そんなある日のこと。
仕事帰りにマンションのポストを開けると、見慣れない“黄色い封筒”が差し込まれていた。チラシや光熱費の明細に挟まれながらも、ひときわ異彩を放っている。
差出人:「○○市役所 固定資産税課」
……ん?
固定資産税?
いや、待て。
払ってたよな?
そもそも実家の税金って自動引き落としだっけ?
親がやってた? 自分? 誰?
頭の中が真っ白になり、背筋に冷たい汗が流れた。その瞬間、心の中で “ポンッ” と乾いた音が鳴った。
「お前、いよいよ逃げられなくなってきたぞ」
そんな声がした気がした。
実家を放置していると、どんな未来が訪れるのか?
この「黄色い封筒」は、僕らにそれを容赦なく突きつけてくる。
● 行政からの通知
固定資産税の滞納、特定空家の疑い、管理状況の確認…。
黄色い封筒は、いわば 自治体からの“実家問題ファイナルアンサー” だ。開封すると、行政らしい丁寧な文章でこう書かれていた。
「老朽化が確認され、近隣住民からの相談が寄せられております。」
はい、来ました。近隣住民の“相談”という名のクレーム。
草木が伸び放題。
屋根の瓦が落ちかけている。
庭でハチが巣を作っている。
風が吹くたびバキバキと音がする。
これ、全部「想定されるケース」だが、あまりにリアルすぎて、読んだ瞬間ため息が漏れた。
● 特定空家になれば、固定資産税が最大6倍に
「固定資産税の優遇(住宅用地特例)」が外れると、税額は跳ね上がる。
何もしていないのに、財布だけがひたすら痛む。
しかも行政は一度動き始めたら止まらない。
最悪の場合、“行政代執行”として解体され、その費用が請求される。
(※こちらも「想定されるケース」です)
正直、僕はこの日まで実家のことを軽く考えていた。
でも、封筒を開けた瞬間に理解した。あの家は「家」じゃない。
“時限爆弾” だったのだ。
親の介護はこれから。
老朽化は進む。
荷物は増える。
相続の話はしていない。
遠距離恋愛の元カノより厄介な存在が、実家だ。放置しても音信不通にはならない。
逆に、向こうから“通知”という形で連絡してくる。
この逃げ場のなさが、何よりしんどい。
でも、ここからが本題だ。
「遠方で動けないから無理」と思っていたが、実は 家に行かなくてもできる対処 がいくつもある
ここでは、負担が激減する現実的な方法だけを3つ紹介する。
① 現況確認は“写真と書類だけ”でできる
・親にスマホで写真を撮って送ってもらう
・市役所に電話して外観確認を依頼
・固定資産税の支払い状況を確認
・登記簿をオンライン請求
実家に帰省しなくても、情報は集められる。
② 最小コストで維持する
・月1回の見回りサービス
・庭木の剪定だけ依頼
・雨漏りや倒木リスクの検査
・空き家管理会社にスポット依頼
「全部やる」必要はなく、
“問題の芽”だけ摘んでおけば、行政指導はほぼ避けられる。
③ ゴール設定は3択
実家の未来は、大きく分けて以下の3つ。
- 残す(管理する)
- 貸す(収益化)
- 売る(負担ゼロ)
特に「売る」は、想像以上に早く進む。
今は空き家相談窓口や仲介専門も多く、遠方でもスムーズだ。
もしあなたが今、「黄色い封筒」に心当たりがあったり、「そろそろヤバいよな…」と感じているなら
プロに相談すると、本当にラクだ。
・片付け
・管理
・売却
・相続の整理
これらを“一本化して任せられる”サービスが増えている。
自分で全部やると数か月かかることが、
相談だけなら 30分 で終わることもある。
押し売りはいらない。
ただ、プロが入ると、「考えたくない問題」が「終わる話」になる。
黄色い封筒は“終わり”ではなく“始まり”だった
あの日、ポストで見つけた黄色い封筒。
最初は心臓がヒュッとなったけれど、
結果的に、僕にとっては“現実と向き合うスイッチ”になった。
実家問題は、放置すればするほど大きくなる。
でも逆に、
一歩動けば一気に片づくことも多い。
あなたのポストにも、いつか届くかもしれない黄色い封筒。
それは恐怖ではなく
「そろそろ整理を始めてもいい頃ですよ」という合図
なのかもしれない。
深呼吸して、できることからひとつ。
そうすれば、重荷だと思っていた実家問題も、必ず軽くなる。