
「まさか、親の家をもらうのにお金を払うとは思ってなかった」——。
これ、実は多くの人が口をそろえて言う“相続の落とし穴”です。
相続税と聞くと、「資産家やお金持ちだけの話」と思う方も多いでしょう。
でも、近年の地価上昇と税制改正で、「普通の家」でも課税対象になるケースが激増しています。
「親が残してくれた実家」が、気づけば“罰金みたいな税金”の対象になっている。
今回はそんな、リアルで笑えないけど“笑うしかない”相続の現実を、
ひとつの想定ストーリーを通じてお伝えします。
なぜ“罰金みたいな税金”が発生するのか?
まず整理しておきましょう。
親の家を相続したときに発生する税金は、主に次の3つです。
- 相続税:遺産総額が基礎控除を超える場合に発生。
- 固定資産税:名義を引き継いだ時点で毎年課税。
- 譲渡所得税:売却した場合に発生(購入時より値上がりしていれば課税対象)。
つまり、「もらった瞬間」「持っている間」「売るとき」、
この3つのタイミングで課税される可能性があるのです。
しかも問題は、親の家の評価額が“想像以上に高い”という点。
特に都心や駅近エリアでは、土地の評価が数千万円に達するケースも珍しくありません。
たとえば、
「うちは郊外の一軒家だから大丈夫」と思っていた方が、
実際に調べたら土地評価が3,000万円以上で、
基礎控除(3,000万円+相続人600万円×人数)を超えて課税される……という話もよくあります。
さらに近年は、「空き家対策特例」や「小規模宅地等の特例」など、
節税できる制度も複雑化しており、
知らないまま放置していると「特例が使えず全額課税」という悲劇も。
要するに、
「親の家を相続する=お金がかかる構造」なのです。
想定ケース「まさかの“税金爆弾”に焦る次男・健一さん」
ここで、よくある想定ケースを紹介します。
登場人物は——
健一さん(48歳・会社員・東京都在住)。
実家は千葉県船橋市にあり、両親が40年前に購入した木造一戸建て。
父の他界後、母も亡くなり、長男と健一さんの2人で遺産分割を進めることに。
実家は築年数も古く、「誰も住まないだろうから、売って清算しよう」と軽い気持ちで進めました。
ところが、問題は土地の評価額。
不動産会社の査定で出た金額は——
「3,800万円」。
健一さん:「え?こんな古い家なのに?」
担当者:「駅徒歩15分圏内で土地が広いので、評価は高いんです」
結果、基礎控除をわずかに超えてしまい、相続税が約200万円発生。
しかも、売却までの間は固定資産税が年10万円以上。
解体も必要で、その費用が約120万円。
「なんで“もらった家”で赤字になるんだよ!」と、健一さんは頭を抱えました。
さらに売却時、譲渡所得税の申告も必要になり、
税理士に依頼する費用まで追加発生。
健一さんが最終的に得た利益は、
売却価格から諸費用・税金を引いたわずか数十万円。
健一さんは笑いながらこう言いました。
「親が残してくれたのは“家”じゃなくて“税金の宿題”だったよ…」
でも、実はこれは笑い事ではありません。
相続の約6割の家庭が“思ったよりお金がかかった”と感じているという統計もあるほど。
だからこそ、“事前準備”が最大の節税になる
相続は「亡くなってから考える」では遅すぎます。
今回の健一さんのケースも、
もし生前に「実家をどうするか」を話し合っていれば、
- 生前贈与
- 小規模宅地の特例申請
- 解体・更地化による節税対策
など、選べる手段があったはずです。
つまり、親が元気なうちに家の話をすることが“最大の節税策”。
日本人は「相続」や「遺品整理」をタブー視しがちですが、
むしろ“家族で笑いながら話せるうちに決めておく”ことが、後のトラブルを防ぎます。
そしてもう一つの重要ポイントが、「空き家のまま放置しない」こと。
空き家は時間が経つほど価値が下がり、 固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)も外れるリスクがあります。
結果、倍近い固定資産税を支払うハメに。
これが俗に言う“罰金みたいな税金”の正体です。
まとめ
相続は“お金の話”ではなく、“家族の未来の話”です。
「親の家をどうするか」を先送りにすると、
結果的にお金も時間も奪われることになります。
もしあなたが今、
「実家どうしよう…」と少しでも感じているなら、
それは準備を始めるチャンスです。
税金は“知っていれば防げる痛み”。
そして、「笑って話せるうちに決めること」が、
家族にとっての最高の“相続対策”なのです。
- まずは実家の固定資産税評価額を調べてみましょう。
- 市区町村の固定資産税通知書、または法務局で簡単に確認できます。
- さらに、「相続対策・空き家整理の専門業者」や「税理士」に相談し、
自分の家がどんな税制特例の対象かを確認するのがベストです。
「親の家をもらって困らないようにする」こと——
それが、本当の意味での“相続の準備”なのです。