
空き家特例を使って売却しようとしても、事前に土地の測量をしていないだけで売却が止まり、特例の適用にも影響が出ることがあります。
「建物を解体すればOK」「相続した空き家を売ればいいだけ」と思われがちですが、実際の現場では境界・面積・登記の不一致が原因で取引が進まず、結果的に特例の期限に間に合わないケースも少なくありません。
つまり、空き家特例を確実に使うためには、税制の知識だけでなく不動産実務上の準備(特に測量)が非常に重要なのです。
なぜ測量していないだけで売却が止まるのでしょうか
理由はシンプルで、土地の正確な範囲が確定していないと買主が安心して購入できないからです。
特に相続した実家は、次のような状態になっていることが多いです。
- 昔の測量のまま更新されていない
- 境界杭がなくなっている
- 隣地との境界が曖昧
- 登記簿の面積と実測が違う
- 越境(塀・樹木・建物の一部)がある
買主や金融機関は、こうしたリスクを非常に嫌います。
もし購入後に「実は土地が小さかった」「隣と境界トラブルになった」となれば、大きな損失になるためです。
そのため多くの買主は、
→ 確定測量図の提出
→ 境界確認書の取得
を購入条件にします。
ここで問題になるのが時間です
測量はすぐ終わるものではありません。
一般的な流れは次の通りです。
- 測量士に依頼
- 資料調査
- 現地測量
- 隣地所有者へ立会い依頼
- 境界確認書の取得
- 測量図作成
隣地が多かったり、所有者が遠方だったり、相続登記が未了だったりすると、数ヶ月〜半年以上かかることもあります。
ここで空き家特例の期限が迫っているとどうなるか。
当然、売却が間に合わない可能性が出てくるのです。
実際にあった典型的なケースを紹介します。
相続した実家を解体し、空き家特例を使って売却する予定だったAさん。
不動産会社に依頼し、すぐに買主も見つかりました。
しかし契約直前、買主からこう言われます。
「確定測量はありますか?」
Aさんは初めて測量の必要性を知ります。
調べてみると、最後に測量されたのは40年以上前。
境界杭もほとんど消えていました。
慌てて測量を依頼しましたが、ここからが大変でした。
- 隣地の一部が未相続で所有者不明
- 別の隣地は共有名義で立会いが必要
- 塀が越境している可能性が発覚
結果、境界確定に約8ヶ月。
その間、買主は待てずに購入を断念。
さらに問題はここからです。
売却が遅れたことで空き家特例の期限が迫ったのです。
特例には、
- 相続開始から一定期間内の売却
- 建物解体の時期
- 譲渡のタイミング
など細かい条件があります。
測量が長引いたことでスケジュールが崩れ、
税理士からこう言われました。
「このままだと特例が使えない可能性があります」
最終的には期限ギリギリで売却できましたが、
価格は当初より大幅に下がり、精神的負担も大きかったそうです。
Aさんの感想は一言。
「測量を先にしておけばよかった」
まとめ
空き家特例を使うとき、多くの人が税金の条件ばかり気にします。
しかし実際には、
✔ 測量
✔ 境界確定
✔ 登記整備
✔ 解体時期
✔ 売却スケジュール
こうした実務の準備が特例の可否を左右することが少なくありません。
特に測量は後回しにされがちですが、
- 売却停止の原因になる
- 買主が離れる
- 価格が下がる
- 特例期限に間に合わない
という重大リスクがあります。
空き家を売却する予定があるなら、まず確認してほしいのはこの3つです。
① 確定測量図はあるか
② 境界は明確か
③ 登記面積と一致しているか
もし不明なら、売却前に測量を検討するのが安全です。
空き家特例は大きな節税効果がありますが、
使えるかどうかは「税制」だけで決まりません。
測量していなかっただけで売却が止まり、特例が危うくなる。
これは決して珍しい話ではないのです。
だからこそ、売却を考えた瞬間から準備を始めること。
それが、空き家特例を確実に活かす最も現実的な方法です。
※本記事は執筆時点の法律情報に基づいています。空き家特例の要件は改正されることがあるため、実際に適用を受ける際は必ず税理士や税務署へ個別にご相談ください。